「なおこ先生とすると、自信が持てる」
ある日、息子と、学校の先生の話をしていた。
書道の時間に、補助で入ってくれる、なおこ先生。
その先生の話になった時、息子が、はっきりと、こう言った。
「なおこ先生とすると、自信が持てる。」
私は、すごく、すごく、嬉しかった。
息子は、自分を大事にしてくれる人と、そうでない人を、とても敏感に感じ取る子だ。
言葉が少なくても、相手の心の奥を、肌で感じ取る。
だから、その息子が「自信が持てる」と言うなら ──
なおこ先生は、きっと、本当に、息子を大切にしてくれている先生なんだと、思った。
いい先生なんだなあ、と、心から思った。
わざわざ、届けてくれた「大」の字
その、なおこ先生から、こんなことがあった。
ある朝、息子が書道で書いた「大」という字を ── 大きな、のびのびとした字を ──
なおこ先生が、わざわざ、私に届けてくれたのだ。
「上手に書けていますよ。一生懸命、頑張っていますから。」
そう言って。
そして、こう、付け加えてくれた。
「他の先生にも、ちゃんと許可をいただいていますから。こっそり差し上げているわけではないので、安心して、受け取ってくださいね。」
私は、この一言に、はっとした。
なおこ先生は、息子の頑張りを認めてくれただけじゃない。
私が、変な気を遣わないように、ということまで、先回りして、配慮してくれていた。
「特別扱いしてもらって、いいのかな」
「こっそりで、大丈夫かな」
そんな風に、親が肩身の狭い思いをしないように。
息子だけでなく、私の心まで、大事にしてくれていた。
とても、嬉しかった。
「もったいない」の、本当の意味
後になって、その「大」の字のことを、詳しく知った。
書道では、上手に書けた字と、失敗した字(練習になった字)が出る。
失敗した練習用の紙は、筆を拭く「筆拭き」のように使われて、やがて、捨てられていくのだそうだ。
なおこ先生は、息子が書いた「大」の字を見て、こう思ってくれたらしい。
「これを、筆拭きにして捨ててしまうのは、もったいない。」
もったいない。
その一言を聞いて、私は、胸が、いっぱいになった。
たくさんの練習用紙の中の、一枚。
普通なら、筆拭きにされて、捨てられていく、ただの紙。
でも、なおこ先生にとって、息子の「大」の字は、そうじゃなかった。
息子が、一生懸命、頑張って書いた、大切な一枚だった。
だから、捨てるのは「もったいない」と、すくい上げて、私に届けてくれた。
「もったいない」──
この、日本語の美しい言葉には、ものを、そして、その努力を、粗末にしない心がこもっている。
なおこ先生の「もったいない」は、息子の努力を、息子という存在を、大切に思ってくれる心だった。
息子の書いた字を、粗末にしない。捨てない。
価値あるものとして、すくい上げてくれる。
息子が「なおこ先生とすると、自信が持てる」と言うのは ──
きっと、この「もったいない」の心を、ちゃんと感じ取っているからだ。
自分の頑張りを、大事にしてくれる。
その安心が、息子の自信を、静かに、育てている。
いい先生がいる、しあわせ
正直に書くと、学校のことで、つらい思いをすることも、ある。
分かってもらえなくて、泣きたくなる日も、ある。
でも ── なおこ先生のような先生も、ちゃんと、いる。
息子を、一人の子として、ちゃんと見てくれて。
頑張りを、価値あるものとして、すくい上げてくれて。
親の気持ちまで、配慮してくれて。
そうやって、息子の自信を、育ててくれる先生が。
いい先生がいて、しあわせだ。
心から、そう思う。
同じ場所にいる、あなたへ
もし、あなたが、お子さんのことで、つらい思いをしているなら。
分かってもらえない先生や、心ない言葉に、削られているなら。
どうか、覚えていてほしい。
いい関わりの中でなら、あなたのお子さんは、必ず、力を発揮できます。
うちの子が、なおこ先生のもとで「自信が持てる」と言えたように。
あなたのお子さんにも、きっと、その子を大切にしてくれる、いい先生や、いい人が、どこかにいます。
全部が、絶望じゃない。
その子の頑張りを「もったいない」と、すくい上げてくれる大人が、ちゃんといる。
そういう出会いを、大切に。
そして、そういう出会いがあった時は、どうか、その幸せを、心いっぱいに、味わってください。
いい先生がいて、しあわせ。
その気持ちが、つらい日々の中の、あたたかい灯りになりますように。
なおこ先生、ありがとうございます。
息子の「大」の字を、すくい上げてくださって。
そして、息子の自信を、育ててくださって。
あの「大」の字は、我が家の、大切な宝物です。
訪問看護師(Psychiatric Visiting Nurse)として精神科・一般訪問看護に従事しながら、ASD・ADHD・低緊張のあるLUCAを育てるシングルマザー。「一人じゃないよ」を、世界中の親に届けたくて、書いています。