ドイツの最新医療が証明した「音の処方箋」
2歳のLUCAが、私の手を引っ張り始めた日のことを、今でも鮮明に覚えている。
普通じゃない力だった。 小さな手のひらなのに、まるで何かに引き寄せられるように、まっすぐ前だけを向いていた。
「この子は、私に見せたいものがある。」
母親の本能が、そう叫んでいた。
発語が乏しかった。笑顔も少なかった。
1歳のころから、私は毎日ひたすら話しかけた。 返事がなくても。目が合わなくても。
「この子はどんな声で笑うんだろう」—— それだけを考えながら、毎日1回、笑わせることを自分に課していた。 泣きながら、笑わせていた日もあった。
でもLUCAには、言葉よりも先に、 ちゃんと「好きなもの」があった。
月と、踏切と、電車の音。
日中、空に月が見えると、 LUCAは小さな指でそっとさして、ニッコニコの笑顔で私の目を見た。
キラッキラの瞳で。
あの瞬間—— 初めて、「この子とつながれた」と思った。
言葉じゃなかった。 視線と指先と、満面の笑顔だけで、 私たちはたしかに、会話をしていた。
LUCAに手を引かれて着いたのは、家から1キロ以上先の踏切だった。
踏切に着いた瞬間、LUCAが変わった。
満面の笑顔。 キラッキラのお目目。 ピョンピョン跳ねて、喜びを全身で表現した。
低緊張があるから、疲れやすい。 いつもすぐ「抱っこ」になる。
でも次の電車が来るとき—— 私の腕の中でも、ピョンピョン跳ねながら、 「タンタンタン、タタンタタン」と口ずさんでいた。
その声を聞いて、私は泣いた。 誰にも見えないように、LUCAの髪に顔を埋めて。
この子は、ちゃんと世界を楽しんでいる。 私が知らなかっただけで、ずっと。
それから毎日、踏切に通った。
雨の日も、レインブーツにレインコートを着て。 暑い日は、車の窓を開けて。 体調が悪い日も、「踏切だけ見たら帰ろう」と言い聞かせながら。
2歳から小学校に入る前まで、毎日。
今もLUCAは、踏切のおもちゃで遊ぶ。 庭の枝を遮断機に見立てて、一人で踏切ごっこをする。 あの日と同じ顔で。あの日と同じ声で。
なぜ踏切だったのか
看護師として、あとから気づいた。
踏切の音には、完璧な規則性がある。
カンカンカン、という一定のリズム。 必ず来て、必ず止まる。 予測できる。裏切らない。
ASDの脳にとって、 予測できる音は 「安心」 そのものだ。
「大丈夫だよ」という言葉より、 「また来た、いつもの音だ」という体験のほうが、 もっと深いところに、もっと確実に届く。
LUCAは2歳で、自分の処方箋を自分で選んでいた。 私はただ、手を引かれていただけだった。
ドイツの医療が証明したこと
医療先進国ドイツの最高レベルの指針(S3ガイドライン)に、
こんな記述がある。
「予測可能なリズムやメロディは脳に安心感を与え、社会的なスキルを学ぶ土台を作る」
初めてこの一文を読んだとき、涙が出た。
あの踏切に通い続けた日々が、 雨の日も傘をさして1キロ歩いた日々が、 ここに書いてあった。
LUCAは正しかった。 私はただ、それについていけばよかった。
私がBGMを作り始めた理由
訪問看護師として、精神科の現場で働いている。
言葉が届かないとき、音が架け橋になる瞬間を、何度も見てきた。 LUCAの踏切も、そうだった。
だから私は、音楽を作ることにした。
ASDやADHDの脳が、 「ここは安全だ」と感じられる音の空間を。
医療の知識と、母としての経験と、 イタリアで音楽に救われた記憶を、全部込めて。
もしかしたら今、どこかで—— 雨の中、泣きながら子どもの手を引いているお母さんがいるかもしれない。 「この子のことが、わからない」と膝を抱えている夜があるかもしれない。
あの頃の私へ。 あの頃の私に似た、世界のどこかのあなたへ。
音楽を届けたい。 「大丈夫だよ」じゃなくて、音で。
このBGMは、医療行為ではありません。リラクゼーションと集中のための音の環境づくりです。お子さんの状態によっては、専門家へのご相談もお勧めします。
▶ 無料で聴けるBGMはこちら ↓ [https://www.youtube.com/@NurseNeurodivergentBGM]
written by a Psychiatric Visiting Nurse & Mom of LUCA autism-mama-diary.com
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